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■映画「死の棘」

「死の棘」(小栗康平監督)は、1990年のカンヌ国際映画祭で、グランプリと並ぶ大 賞に輝いた。繊細な映像表現の独創性が評価されたのだと思う。しかし、私はストイッ クになりすぎて、インパクトが弱くなったように感じた。「泥の河」「伽椰子のために」で、人間の生きていく痛みを寡黙な映像に込め、観終わったあとにズシリとした感動を残 したが、この作品は違和感が残った。

「死の棘」は映画化が不可能と言われてきた島尾敏雄 の代表作。私は、日本戦後長編小説のベスト5に入る名作だと思う。内部に崩れていく夫 「トシオ」と外部に振れていく妻「ミホ」。2人の関係が会話のズレを繰り返しながら、 亀裂を生み、激烈なドラマに発展していく。挿入される奄美の自然描写は、観る者に刺さってくるほどに美しい。しかし主人公の 演技の振幅が狭すぎるので、自然描写との緊張関係が生きてこない。むしろトシオの特攻 隊帰りという戦争の傷と、ミホの背後に広がる奄美の文化と巫女性を前面に出したほうが 映画的だった。

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Japan, Sapporo
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